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笠利の古い建物を調べていたら、太い柱の上に、小さな家がちょこんと載ったような建物が出てきた。
あれ、下に壁がない。
上へどうやって物を入れたんだろう。あの屋根、どれも茅葺なのかな?
そんなところで目が止まった人へ。これは高倉と呼ばれる、高床式の倉庫です。穀物などをしまう上の空間に加えて、下にも作業などに使う場所がある。屋根だけを見て終わるには、ちょっと惜しい建物なんだよね。
しかも、笠利町宇宿にある泉家住宅の「くら」は、文化庁の記録では鉄板葺。
おお、茅葺の姿だけが高倉じゃないんだ!
今日は泉家住宅を入口にして、奄美の高倉のどこを見ると面白いかを考えます。比較する茅葺の高倉は龍郷町のもの。笠利に全部集まっている観光コース、という紹介ではないので、場所を分けながら読んでね。
現地へ行った体験談ではなく、文化庁、鹿児島県、奄美市の公開資料を使った建物の読み方です。写真と説明を家で眺めるときにも使えるように、一緒に形をほどいていこう。
上にしまう、下で働く。高倉を上下に分けて見ると面白い!
最初は名前からいこう。高いところにある倉。文字どおりの姿だけれど、何を守るために高くしているかまで考えると、あの足の長さが気になってきます。
鹿児島県の文化財紹介では、高倉を、穀物や農具、サノと呼ぶソテツの実などを貯蔵する高床式の倉庫と説明しています。通気性がよく、湿気やネズミから貯蔵物を守るところに特徴があるんだって。
大事な食べ物を、地面と同じ高さにそのまま置かない。
そのための建物だった、と考えてから写真へ戻ってみてください。かわいい形の印象に、保管の工夫という見方が一つ増えるよ。
ただし、紹介に挙がる貯蔵物が、すべての高倉へ同じように納められていたとまでは言えません。泉家住宅の高倉に何がどれだけ入っていたかは、別に資料が必要です。一般的な役割と、一棟の具体的な使われ方は分けておこう。
そして、目線を下げてみて。
柱と柱の間、ここも暮らしの空間です。
県の紹介には、倉下が農作業場、道具置き場、年中行事の宴会場などに使われたことが載っています。旧岩切家住宅高倉の個別解説では、上部には湿気を嫌う食料を保存し、下では精米などの農作業を行ったと説明されています。
上だけが本体で、下はたまたま空いている場所。そう見ていたら、この違いは大きいよね。保管と作業が縦につながっていると知ると、写真でも倉下の広がりを見たくなる。
観察用に簡単な絵を描くなら、屋根の上手さにこだわらなくて大丈夫。「上にしまう」「下で作業する」と、上下へ一言ずつ書き込んでみよう。建物の名前を暗記するだけより、どこが何の場所かを思い出しやすくするための提案です。
この見方を本で広げたい人には、安藤邦廣さんと筑波大学安藤研究室の『小屋と倉 干す・仕舞う・守る木組みのかたち』が候補になります。公開目次に「奄美の高倉 湿気から守るかたち」があります。役割から建物を見たい、という今回の疑問に直接つながる章題だね。
役割の説明は鹿児島県の文化財紹介冊子・掲載ページ20、個別の使い方は県文化財事典「旧岩切家住宅高倉」を参照しています。
泉家住宅の高倉は鉄板葺。「全部、茅葺でしょ?」から一歩進もう
高倉と聞いて、ふさふさと厚い茅葺の屋根を思い浮かべた人もいると思う。
でも、泉家住宅の記録を読むと、屋根の欄には「鉄板葺」とあります。
ここ、見比べる入口にぴったり!
高倉という建物の種類と、屋根を何で葺いているかは、同じ情報ではないんです。
文化庁の国指定文化財等データベースでは、泉家住宅の「くら」の構造・形式を、高倉、正面2.8メートル、側面2.5メートル、寄棟造、鉄板葺と記録しています。時代は明治、年代は1885年頃という記載です。
「寄棟造」は屋根の形についての言葉、「鉄板葺」は屋根を覆う材料についての言葉。説明を読むときは、形と材料を別の欄に分けると混ざりにくいよ。寄棟だから必ず茅葺、という組み合わせではありません。
比較する旧岩切家住宅高倉も、解説では寄棟造。でも、こちらは茅葺です。二つを並べると、「形の名前は同じでも、屋根材は違う」という読み方ができるね。
ここから、どちらが暑さに強い、何年長持ちする、と性能まで決めてしまわないことも大事です。屋根の名前だけでは、修理歴や下地、実際の状態まで分かりません。この記事で比較しているのは、公開資料に記録された形と材料です。
また、いま掲載されている屋根の姿を、そのまま創建時の姿だと思わないでね。奄美市の泉家住宅の説明には、平成29年度に屋根の葺き替え修理を行ったことも出てきます。古い建物でも、維持するための仕事が重ねられているんだね。
写真を保存するときは、撮影年が分かるなら一緒に残す。年が分からなければ、分からないままにしておく。屋根の色や状態の違いを見つけても、すぐ「別の建物だ」「資料が間違いだ」と結論にしないで、まず撮られた時期と修理の記録を照らしてみよう。
古い姿を一枚、今の姿を一枚と探すのも楽しいけれど、無理に変化の物語を作らなくていいんだよ。今回の資料だけでは、鉄板に変えた時期や当初の屋根材までは確認していません。
分かるのは、泉家住宅の「くら」は鉄板葺として記録された高倉だということ。それだけでも、頭の中の「高倉はこの姿」という箱が少し広がると思う。
形・材料・寸法は文化庁「泉家住宅 くら」、葺き替えの記録は奄美市「泉家住宅」にあります。
柱だけで終わらせない。丸い柱から、上の木組みへ目を移してみて
四本の柱で、上の倉を支えている。
まずそこが目立つけれど、もう少し上に視線を動かすと、木と木の組み合わせも見えてきます。
泉家住宅について、鹿児島県の文化財事典は、くらが四本の円柱を持つことを紹介しています。一方、旧岩切家住宅高倉の文化庁の解説には、その柱を腰貫で固め、上部に目貫や九つ木と呼ぶ材を架けることまで書かれています。
九つ木は、両端が反り上がっている。
名前だけ読むと難しそうなのに、端の形に目を向けると、探す場所が急に具体的になるよね。
写真の木組みを見たいなら、最初から部材名を全部書き込もうとせず、「柱」「横へ渡った材」「端の反った材」という順に追ってみてください。旧岩切家の解説で確認できる構成を、写真で見つけられるか試す読み方です。
同じ高倉でも、一棟の説明を別の一棟へ丸ごと移さないようにしたいね。例えば、旧岩切家で確認した九つ木の形や組み方を、泉家住宅も細部まで全く同じ、と断定することはしていません。比べるには、それぞれの写真や記録が必要です。
寸法も、同じように丁寧に見たいところ。泉家のくらは「正面2.8メートル、側面2.5メートル」、旧岩切家の解説は「桁行2.5メートル、梁間2.5メートル」です。数値だけを抜いて、すべて同じ測定範囲だと扱わないでください。
文化庁が旧岩切家について示す建築面積は6.0平方メートル。二つの2.5を掛けた数と違うからと、その場で書き換える必要はありません。資料の寸法欄と建築面積欄は、記載どおりに残しておこう。どこを基準に測っているかを確認せず、床面積や収納容量へ計算し直すのは避けたいです。
見比べメモなら、数値の横に元の項目名を添えるだけでいいよ。「2.5」とだけ残すより、「梁間2.5メートル」と書く。調べ直したときに、その数字が柱の高さだったか、幅だったかで迷わずに済みます。
木組みを知ることと、実物に触って試すことは別です。部材を押したり、柱へ登ったりしなくても、公式写真や許された見学範囲から探せるものはあります。近づけない部分は、見えなかったという記録で十分。
分からない部材名を一つ持ち帰って、本の索引や解説へ戻る。そんな楽しみ方なら、最初の一枚の写真が、読み終わりのない小さな調べものになるね。
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部材と寸法は文化庁「旧岩切家住宅高倉」、泉家の円柱は鹿児島県文化財事典を参照しています。
高倉はどこにある?家や井戸、移築の記録も一緒に見よう
泉家住宅の説明には、高倉だけでなく、おもて、とぉごら、井戸、土塁、防風林も出てきます。
おもては座敷がある棟、とぉごらは台所がある棟。県と市の解説は、こうした家屋と高倉が一緒に残る点に、暮らしの空間としての価値を見ています。
つまり、高倉を建物単体の形だけで見て終わらせず、家の中でどんな役割を担当していたかにも目を向けられるんだね。食べ物をしまう倉、食事を作る棟、人が過ごす棟。それぞれを分けて知ると、建物どうしのつながりが気になってきます。
ただし、役割が分かっただけで、当時の家族がどんな順番で歩いたか、誰が精米をしていたかまで想像で書き足さないでね。その家の暮らしを確かめるには、聞き書きや別の記録が必要です。
今回なら「高倉のそばに何が記録されているか」を拾うところまで。井戸はサンゴ石の囲い、周囲には土塁や防風林という説明があります。平面図を読む機会があれば、建物と敷地の要素を別々に消さず、同じ紙へ載せてみたいところです。
一方、龍郷町の旧岩切家住宅高倉は、移築の記録を持つ建物です。県の案内では2008年に中央公民館敷地内へ移築、文化庁の記録では1989年頃と2008年の移築が示されています。造られた時代と、現在地へ移された時期は別です。
大正期の建物だから、この場所に大正からずっと建っている、と読まないこと。建物の年齢と場所の歴史を分けると、移築によって残されたという見方もできるね。
所在地も分けよう。泉家住宅は奄美市笠利町宇宿。旧岩切家住宅高倉は大島郡龍郷町瀬留です。写真検索で似た姿が並んでも、同じ集落の建物とは限りません。メモの一行目に名前と市町村を入れておくと、後で取り違えにくいよ。
現地見学を考える場合は、文化財の説明があることと、当日自由に敷地や内部へ入れることも分けてください。この記事では泉家住宅の見学受付、公開時間、料金、立入り範囲を確認できていません。訪問前に、奄美市の文化財担当などへ見学方法を問い合わせてね。龍郷町の高倉についても、現在の施設案内を別に確かめよう。
行ける場所を全部増やさなくても大丈夫。今回は泉家の公式資料を読むだけ、次の旅で別の高倉を比べる、でも十分続きがある。まず一棟を名前付きで覚えると、ほかの写真の見え方も変わってくるよ。
敷地と家屋については奄美市「泉家住宅」、移築と所在地は県「旧岩切家住宅高倉」と文化庁の個別記録を参照しています。
写真の「なぜ?」を一つ残して、本の高倉へつなげよう
上の倉だけ見ていたところから、下の作業場へ。
屋根はみんな茅葺だと思っていたところから、鉄板葺の記録へ。
一つ分かると、次に見たい場所が出てくるね。ここから本を選ぶなら、「奄美について広く知る一冊」より、「倉の役割と構造をもっと知る一冊」が、今回の疑問には合いそうです。
『小屋と倉 干す・仕舞う・守る木組みのかたち』は、安藤邦廣さん・筑波大学安藤研究室の著作で、建築資料研究社から2010年5月に刊行。ISBNは9784863580633です。公開目次では、奄美の高倉が「干す」の章に置かれています。
え、倉なのに「干す」の章?
この並びも、読む前の問いになるよね。
ただし、この記事ではその章の本文を読んだうえで内容を再現しているわけではありません。章題から、湿気と保管の関係に目を向ける本の候補として紹介しています。泉家住宅や旧岩切家の個別事例が収録されているかも、ここでは確認していないよ。
公開目次には、奄美以外の地域の小屋や倉も並びます。写真の形だけを比べたいのか、何を干し、何をしまい、何から守ったかを知りたいのか。購入前にその違いを考えると、旅のガイドブックとの選び分けがしやすいと思います。
2010年の本を、今の公開時間や施設配置の案内として使わないことも大切です。建物を理解する資料と、訪問日の情報は別々に使おう。発行年が古いから建築の資料として無意味、と捨てる必要もないし、載っている情報が今も全部同じ、と扱う必要もありません。
検索結果では中古などが混ざることがあります。購入するなら著者、出版社、ISBNを照合して、状態、価格、送料、配送条件を販売店で確認してください。本を買わず、まず図書館の所蔵や公式資料で調べる方法でもいいんだよ。
今日のメモに残すなら、「泉家のくらは鉄板葺として記録されている」「旧岩切家の倉下では農作業をしていた」「木組みの反った材をもっと見たい」。この中から、自分が引っかかった一つを選んでみよう。
きれいな感想文にしなくていい。
あの下は何に使ったの? という疑問が一つあれば、次のページを開く理由になる。
笠利の風景で気になった小さな倉を、名前の分からない建物のまま通り過ぎずに済む。その入口として、まずは屋根から、次は足元から。気になるところへ、もう一度目を戻してみてね。
書誌と公開目次は南洋堂書店の書籍紹介、著者・刊行情報はCiNiiの書誌も参照しました。本文全体の読了や現地見学をした紹介ではありません。