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笠利の旅で「ケンムン」という名前が気になったら、姿の説明だけでなく、一つの話を読んでみよう。ケンムンは、奄美に伝わる不思議な存在です。
今回注目するのは、塩炊きのお手伝い。
えっ、火のそばへやって来て、仕事もするの?
国際日本文化研究センターの「怪異・妖怪伝承データベース」には、笠利町の話として、火の番や塩くみを手伝うケンムンの記録が載っています。妖怪の名前から、島の暮らしが出てくるところを見てみよう。
火にあたりたいケンムンと、塩炊きの仕事
データベースの要約では、塩炊きの火を囲むところへケンムンが登場します。寒さで暖まりたがり、火の番と塩くみを手伝わせた、という流れです。
登場のくだりには、おならも出てきます。
火を囲んでいて、そこにおなら。こんな細部まで残っているんだね。寒いから暖まりたい、というケンムンが、人の集まる火のそばへ入り込んでいます。
読みどころとして注目したいのは、手伝う仕事が具体的なところです。要約には、ただ親しくなったというだけでなく、火を見たり塩をくんだりする役割が書かれています。
ケンムンが何をしたかを一つ追うと、同じ名前の別の話を読むときにも、どんな場所で人と関わったのかを比べられます。
「どこで、何に載った話か」も一緒に見る
この記録の出典は、山岡英世による「ケンムンが塩炊きの手伝いに来た話」。『奄美民俗ノート』4号、1980年12月の3〜4ページとして登録されています。話者欄には碇重武の名前があります。
ここで、記録を執筆した人と、話を伝えた人の欄が分かれていることにも目を向けてみて。名前を一つだけ見て、誰がどの立場で関わったかをまとめてしまわずに済みます。
データベースに載るのは話の要約です。元の記録を詳しく読みたくなったら、誌名・号・掲載ページを控えて、図書館で探す手がかりにしよう。ケンムンという名前から、一つの語られた話へ、さらにその記録へとたどれます。
ケンムンから、奄美の暮らしの本へ広げたいなら
名越護著『新南島雑話の世界』は、南方新社から出ている、奄美の自然・暮らし・民俗を扱う本です。出版社の公開目次には「奄美のケンムン考」があり、黒糖づくりや大島紬づくりなどの項目も並んでいます。
この本で紹介される『南島雑話』は、幕末の名越左源太が奄美で残した記録です。現代の本の著者は名越護。名前が似ていますが、著者と、取り上げられる記録の書き手を分けて見ると読み進めやすくなります。
出版社の紹介と目次で、自分の気になる項目を見て選んでね。先ほどの笠利の塩炊きの話が、この本にも同じ形で収録されていると確認した紹介ではありません。
旅先で聞いた名前が一つなら、読む話もまず一つ。火の番をするケンムンを入口に、どんな仕事や風景と一緒に語られてきたのかを追ってみよう。名前だけ知っていたころより、笠利の話を聞く楽しみが少し広がるね。