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奄美大島を旅すると、「アマミノクロウサギ注意」の看板や、クロウサギのイラストを見かけることがあります。笠利から島の南へドライブする人も、夜の道路ではクロウサギに出会うかもしれません。
この記事では、環境省の「アマミノクロウサギ」のページ、環境省沖縄奄美自然環境事務所の報道発表(連携協定書の締結のお知らせ、2025年の希少哺乳類の死因解明)、奄美野生生物保護センターの「ロードキル対策」のページ、環境省の世界自然遺産のページをもとに、アマミノクロウサギの基本と、旅行者が気をつけたいことを5つのポイントにまとめます。後半の、夜のドライブで気をつけたいことは、この記事の提案です。
※数値や対策の内容は、各ページの掲載時点のものです。出かける前に、環境省や奄美野生生物保護センターの案内で現在の情報を確かめてください。
アマミノクロウサギとは
奄美大島と徳之島だけにすむウサギ
環境省のページでは、アマミノクロウサギはウサギ目ウサギ科で、学名はPentalagus furnessi、鹿児島県奄美大島及び徳之島の2島にのみ分布するとされています。奄美大島及び徳之島の固有種とされています。
長い歴史をもつ種
奄美野生生物保護センターのページでは、アマミノクロウサギは、地球上で奄美大島と徳之島だけに生息する固有種で、世界自然遺産価値の象徴的な存在と紹介されています。ユーラシア大陸と分かれたとされる約500万年以上の昔に、この2つの島で生き残り、現在に至るまで子孫を残してきたと説明されています。
体の大きさ
環境省のページでは、体重は1,300〜2,700g、頭胴長41〜51cmとされています。連携協定書のお知らせでは、体長は約40〜53cm、体重は約2〜2.5kgと紹介されていて、資料によって示し方が少し異なります。
アマミノクロウサギの5つのポイント
ここでは、環境省の資料から、アマミノクロウサギについて押さえておきたい点を5つにまとめます。
1. 国の特別天然記念物
環境省のページでは、文化財保護法により国の特別天然記念物に指定(昭和38年)されていて、生息地の一部が神屋・湯湾岳天然記念物林に指定されていると説明されています。
2. 国内希少野生動植物種
環境省のページでは、平成16年に国内希少野生動植物種に指定され、同年、保護増殖事業計画が策定されたとされています。環境省第4次レッドリストでは絶滅危惧IB類とされています。
3. 生息を脅かす要因
環境省のページでは、生息を脅かす要因として、高齢級林の減少と分断化、マングースによる捕食、ネコやイヌによる捕食、交通事故が挙げられています。
4. 生息数は回復してきている
環境省のページでは、奄美大島で2,000〜4,800頭、徳之島で約200頭と推定(2003年時点)とされています。一方、連携協定書のお知らせでは、2021年に実施した個体数推定で、奄美大島で10,024個体から34,427個体、徳之島で1,525個体から4,735個体と推定され、その後の調査でも維持もしくは増加傾向が確認されているとされています。外来種対策や森林の回復に伴い、生息数や生息域が回復してきていると説明されています。
5. いちばん多い死因は交通事故
連携協定書のお知らせでは、死因および傷病救護の要因が明らかになったものの中では、両島とも交通事故が最も多い状況とされています。
5つのポイントの早見表
| ポイント | 環境省の資料での説明 |
|---|---|
| 特別天然記念物 | 昭和38年に指定 |
| 国内希少野生動植物種 | 平成16年に指定、レッドリストは絶滅危惧IB類 |
| 脅かす要因 | 森林の減少・分断化、マングース、ネコ・イヌ、交通事故 |
| 生息数 | 2003年時点の推定と2021年の推定がある |
| 死因 | 両島とも交通事故が最多 |
表は、環境省の「アマミノクロウサギ」のページと、沖縄奄美自然環境事務所の報道発表にもとづきます。
2025年の交通事故の件数
奄美大島は過去最多
環境省沖縄奄美自然環境事務所の「2025年奄美大島・徳之島における希少哺乳類の死因解明について」では、奄美大島のアマミノクロウサギでは交通事故による死因が多く、過去最多件数となったとされています。
件数の内訳
同じ発表では、2025年の交通事故の確認件数(生存含む)は、奄美大島でアマミノクロウサギ160件、徳之島で29件とされています。アマミノクロウサギの死体確認数は284件(奄美大島213件と徳之島71件の合計)とされています。
事故が多い道路
同じ発表では、奄美大島では国道58号線(役勝〜網野子、三太郎トンネル前後、朝戸〜和瀬)、県道85号線(赤土山〜新村)、県道79号線(大金久〜戸円)で多く発生し、名瀬周辺(根瀬部、大熊、朝戸)での事故の増加も確認されていると説明されています。
件数の見方
発表では、死体確認件数は情報が寄せられ把握ができた数で、自然界での実際の死亡頭数とは異なるとされています。また、死体は人目に付きやすい道路上で発見されるものが多いため、交通事故による死体が多く発見される傾向にあると説明されています。
| 2025年 | 交通事故の確認件数(生存含む) |
|---|---|
| 奄美大島 | 160件 |
| 徳之島 | 29件 |
なぜ道路に出てくるの?
開けた場所で活動する習性
奄美野生生物保護センターのページでは、アマミノクロウサギは、ハブにおそわれにくい開けた場所で活動する習性をもつようになったと言われていると説明されています。夜行性のアマミノクロウサギにとって、夜の道路は開けた場所で、草を食べたり糞をしたりする生活空間の一部になっているとされています。
島全体がすみか
同じページでは、奄美大島のほぼ全域が森林に覆われていて、森にすむアマミノクロウサギにとっては島全体がすみかになり、私たちが使う道路はそのすみかの中を通っていると説明されています。
個体数の回復との関係
同じページでは、ロードキルが増加している一因として、マングースなどの外来種対策が進んで、個体数や分布域が本来の状態に回復してきていることが関係していると推測されると説明されています。
「3つの運転」とは
減速運転
奄美野生生物保護センターのページでは、夜の道路にいるアマミノクロウサギは目立ちにくいため、早めに発見して衝突を回避する予防策として「3つの運転」が重要とされています。その1つ目が、事故多発区間やカーブ区間での「減速運転」です。
ハイビーム運転
2つ目は、路肩に注意し、早期発見するための「ハイビーム運転」です。
かもしれない運転
3つ目は、飛び出してくる、目の前にいる「かもしれない運転」です。
イヌやネコとの関係
徳之島ではイヌネコによる死因が過去最多
2025年の死因解明の発表では、徳之島のアマミノクロウサギでは、イヌネコによる死因が過去最多となったとされています。2025年には、奄美大島でアマミノクロウサギ7件、徳之島で19件が、イヌやネコによる捕殺死体もしくは救護個体として確認されたとされています。
確認数はごく一部と考えられる
同じ発表では、イヌやネコによる捕殺の確認数は、車道を中心とした発見と回収に限られていることなどから、実際の捕殺頭数のごく一部を示したものに過ぎないと考えられると説明されています。
ノネコの捕獲事業
発表では、奄美大島と徳之島では、森林域に生息するノネコの捕獲事業を行っていて、捕獲されたノネコの糞からは多くの希少種が検出されていると説明されています。
飼い主へのお願い
発表では、イヌやネコを飼うときは、市町村役場での登録、マイクロチップの装着、不妊・去勢手術、室内飼育の徹底、放し飼いや遺棄をしないこと、ノラネコやノライヌにみだりに餌を与えないことなどを守るようお願いしています。
守るための取り組み
保護増殖事業
環境省のページでは、生息状況のモニタリング調査や交通事故防止対策などが実施されているとされています。平成12年度から実施されている外来生物(マングース)防除事業により、奄美大島の生息状況が近年回復傾向にあると説明されています。
鳥獣保護区と条例
環境省のページでは、鳥獣保護法により生息地の一部が国指定湯湾岳鳥獣保護区に指定され、大和村野生生物保護条例により大和村内での捕獲等が禁止されていると説明されています(平成13年)。
傷病救護の連携協定
沖縄奄美自然環境事務所のお知らせでは、傷病救護や生体を活用した普及啓発について、各組織の役割分担などを明文化し、連携体制を継続的に確保するため、連携協定書を締結したとされています。救護された個体は地元の動物病院等の協力を得て治療を行い、可能な限り野生に戻すように努めているものの、多くが死亡していると説明されています。
夜のドライブで気をつけたいこと
ここからは、環境省の資料をもとにした、この記事の提案です。
事故が多い区間を地図で確かめる
レンタカーで島を回るときは、発表で挙げられた事故の多い道路を地図で確かめておくと、どこで減速するか意識しやすくなります。
時間に余裕のある計画を
夜の移動が急ぎにならないよう、宿に着く時間に余裕をもった計画を立てておくと、「3つの運転」を心がけやすくなります。
見つけたときの連絡先を控える
発表では、死体発見の情報提供先として、奄美大島は環境省奄美群島国立公園管理事務所(奄美野生生物保護センター)、徳之島は環境省徳之島管理官事務所が案内されています。出かける前に連絡先を控えておくとよいでしょう。
アマミノクロウサギのよくある質問
どこで見られる?
野生のアマミノクロウサギは、奄美大島と徳之島の2島にのみ分布するとされています。連携協定書のお知らせでは、鹿児島市平川動物公園で生体展示を実施していると紹介されています。
世界自然遺産と関係ある?
奄美野生生物保護センターのページでは、世界自然遺産価値の象徴的な存在と紹介されています。環境省の世界自然遺産のページでは、ロードキル対策として、注意看板や柵の設置、交通事故防止キャンペーンなどを行っていると説明されています。
ナイトツアーで気をつけることは?
連携協定書のお知らせでは、観察がしやすくなったことでナイトツアーといった観光利用が増え、観察ストレスの増加や感染症の持ち込みといった影響も問題として挙げられています。参加するときは、ガイドの案内にしたがいましょう。
寿命は?
環境省のページでは、寿命は飼育下で15年とされ、繁殖活動は1年を通して行われていると考えられているとされています。
アマミノクロウサギを知って奄美の夜道を安全に走ろう
アマミノクロウサギは、奄美大島と徳之島だけにすむ国の特別天然記念物です。生息数は回復してきている一方で、交通事故が最も多い死因とされ、2025年の奄美大島の交通事故件数は過去最多でした。夜のドライブでは「減速運転」「ハイビーム運転」「かもしれない運転」を心がけて、島の生きものと共存できる旅にしましょう。